一流のサイエンスライターと代替医療研究の第一人者との共著『代替医療のトリック』は間違い
なく良書。
著者のサイモン・シンは、気鋭のジャーナリスト兼ライター。ケンブリッジ大学で素粒子物理学
の博士号を取得している。彼の代表作である『フェルマーの最終定理』や『暗号解読』は「事実
は小説よりも奇なり」を地でいく、と好評を博したが、本書では十八番といえるストーリーの妙
に頼らず、理を尽くすことのみに筆力を注ぐという大胆な試みが奏功し、出色の啓蒙書となって
いる。
いま一人の著者であるエツァート・エルンストは、英国で代替医療の専門家として初めて大学教
授の職についた人物。代替医療に心酔しているチャールズ皇太子の庇護のもと、アドボケーター
の急先鋒であった彼が研究成果をもとに効果の実否を喝破しているのだから、説得力もいや増す。
本書は、あまたある代替医療からいくつかをピックアップし、あくまで科学の作法に則って、エ
ビデンスをもとに吟味していくのだが、そのほとんどを「プラセボ以上の効果無し」もしくは
「効果が非常に限定的である」と斬って捨てる。
ホメオパシーなどは真正面から拝み打ちといった有り様で、甚だ痛快。
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