「21世紀のクルマ」として電気自動車が脚光を浴びている。だが東京大学名誉教授・安井至氏
は「その見通しは甘い」と言い切る。
電気自動車はエネルギー効率が高く、CO排出量抑制に有効であることは事実だ。だがそれを
もって電気自動車を「地球環境問題の救世主」と持ち上げる人がいるなら、「甘い」といわざるを得
ない。なぜなら予想されるような普及はおそらくないからだ。理由は単純で、電気自動車は「高くて、
使い勝手が悪い」のである。
たとえば、今年4月から日本初の個人向け販売を開始する三菱のiMiEVについていえば、販売
価格は約460万円だ。これほど高額になる理由は、搭載されているリチウムイオン電池が高いか
らで価格の半分を占めるといわれている。しかも寿命は約5年。フルに充電しても走れるのは100
km程度である。460万円払って、近隣しか走れず、5年後に電池交換で200万円もかかる車をい
ったい誰が買いたいと思うだろうか。
にもかかわらず各社が普及に向けて開発を進めているのは、「量産すれば安くなる」というロジック
に基づいている。だが、それは疑わしい。米テスラ社のEVスポーツカー「ロードスター」にはノートPC
などのバッテリーに使われている「18650」という規格のリチウムイオン電池が6800本も積まれて
いる。1本400円として270万円以上になる。18650は三洋電機が年数億本も製造しているが、
それだけ量産してもこの価格なのだ。
電気自動車を持ち上げる論調が多いのは、1つには「エコ」といえば何でも良いとするメディアの誤
解も大きい。昔はソーラーカーが未来のクルマといわれていたが、太陽電池の発電量が少なすぎて、
ソーラーカーレースで見かけるような一人乗りの超小型車が限界である。次世代エコカーとして未だ
に燃料電池車が語られるが、水素をエンジンで燃やして走る水素自動車も、同じ理由から実現は不
可能といっていい。それでも電気自動車が世界的な趨勢であることに間違いないというなら、日本に
とって勝ち目のある電池技術で勝負していけばいいのである。
(SAPIO 2010年4月14・21日号掲載) 2010年5月3日(月)配信
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20100...
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